2020年6月、アメリカ大統領選挙の民主党指名候補争いでバイデン氏が民主党の大統領候補に指名されることが確定しました。
トランプ大統領が支持率を落としている中、バイデン新大統領誕生の可能性も現実味を帯びてきていると言えるでしょう。
そこで今回は
・バイデン氏はどんな政策を掲げているのか?
・トランプ大統領と何が違うのか?
をはじめ、バイデン大統領が誕生すると、日本や中国、株価への影響はどうなるのか?
といった事柄を中心にまとめてみました。
目次
■バイデン氏の政策とは?│基本政策
ジョー・バイデン氏はオバマ政権の副大統領に就任するまで36年間にわたり上院議員をつとめたベテラン議員です。
バイデン氏の政策は中道的と評され、得意分野は外交です。
議会上院では外交委員長を3度にわたって歴任するなど外交通として知られます。
基本的にはオバマ政権時代の枠組みの復活を目指すと考えられます。
2020年7月11日に発表した公約では、トランプ大統領が離脱したイラン核合意への復帰や地球温暖化防止の国際枠組みである「パリ協定」への復帰を表明しました。
一方、トランプ大統領に比べて弱いとされる国内政策について、バイデン氏は2020年7月7日に公約を発表しました。
それによると、
「米国の製造業を再生し、中国に依存しない状況を作る」
として雇用の創出を約束しました。
バイデン氏が国内雇用を重視する姿勢を示したのは、イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州などの「さび付いた工業地帯」、いわゆるラストベルトの有権者へのアピールだと考えられます。
ラストベルトは大統領選の鍵を握る重要な地域で、この地域で勝利したトランプ氏がクリントン候補を破って大統領に就任することができました。
■バイデン氏当選による日本への影響とは?│対日関係
外交問題に対する経験が豊富なバイデン氏は、アメリカ単独ではなく同盟国と歩調を合わせて中国に対抗すると考えられます。
その際、日本はアメリカから対中包囲網への参加を求められるでしょう。
日本からすれば、ビジネスパートナーである中国と対立したくないという思いもあるので、アメリカと中国が対立すればするほど、板ばさみになってしまうでしょう。
バイデン氏が当選した場合、日本政府はトランプ政権に対するよりも難しい舵取りを迫られるかもしれません。
■バイデン氏とトランプ大統領の政策の相違点
まず、社会保障面についてです。
トランプ大統領はオバマ政権が導入した医療保険制度(オバマケア)の廃止を訴えてきました。
その理由は財政負担が大きいこと保険加入の自由を阻害するというものです。
アメリカでは保険は個人が加入するものという考え方が強く、個々人が保険会社と契約を結びます。
そのため、低所得者層は満足な医療を受けられないという批判がありました。
経済的自由を主張するトランプ大統領は国による医療への介入を止めさせようとしました。
それに対し、バイデン氏は医療の公平化を目指すオバマケアの継続と拡充を訴えます。
もともと、民主党には政府の財政出動を大きくするべきだとする「大きな政府」の考え方があり、医療にも国が関与すべきだとする考え方が強いからです。
気候変動については、パリ協定から離脱したトランプ大統領に対し、バイデン氏は当選後にパリ協定に復帰すると述べて真っ向から対立しています。
移民については、トランプ氏がメキシコ国境に壁を築いて完全に排除しようとするのに対し、バイデン氏は移民がアメリカ成長の原動力だとして適切な入国管理を実施したうえで移民を認めるべきだと主張しました。
■バイデン氏当選による中国との関係は?│対中政策
トランプ大統領は、通信会社ファーウェイへの制裁を始め、中国に厳しい態度をとってきました。
その一方で、経済面では中国にアメリカの農産物を購入させるなど、通商面で一定の成果を挙げています。
バイデン氏が大統領に当選したとしたとしても、中国に対して厳しい姿勢を示し続けることが予想されます。
その理由は、中国が5G技術でアメリカの覇権を脅かすからです。
また、アジア・アフリカ諸国に経済援助を与えることで親中諸国を増やしてアメリカに対抗していることも、中国と対決する理由となるでしょう。
加えて、香港国家安全法が施行されたことは共和党・民主党ともに猛反発しています。
こうした超党派の反対を背景にバイデン氏も厳しい態度をとると予想します。
■バイデン氏当選による株価へ影響はあるのか、ないのか
民主党予備選でバイデン氏が優勢となり、左派のウォーレン上院議員やサンダース上院議員がバイデン氏支持を表明すると、ウォール街は警戒感を強めました。
バイデン氏が富裕層や大企業に増税するのではないかとの懸念が広がったからです。
しかし、7月に入るとバイデン氏の当選が株価に対してマイナスではないとの見解が広まっています。
確かに、トランプ大統領は富裕層中心の減税など、経済力にある人にとって有利な政策を展開してきました。
しかし、民主党内でも中道派のバイデン氏は極端に左派的な政策をとると考えにくく、富裕層への増税も小さな幅にとどめるのではないかと考えられるようになりました。
その結果、バイデン氏が大統領選挙で当選しても株価は悪影響を受けないと考えるアナリストが増えているのかもしれません。
トランプ大統領という極端な指導者につかれたアメリカ国民は「大人」な大統領としてバイデン氏を支持するのではないでしょうか。
■【まとめ】バイデン氏について
バイデン氏の政策は中道的で、パリ協定をはじめとする国際協定に復帰することが予想されます。
トランプ政権が行ってきた極端な自国中心主義は是正される可能性が高いですが、対中関係はトランプ政権と同様、強硬路線をとると予想します。
社会保障面ではバイデン氏自身もかかわったオバマケアの拡充を図るでしょう。
対日関係は、米中関係とセットで考える必要があります。
米中関係が緊張すればするほど、日本は、アメリカと中国のどちらにつくかを迫られるかもしれません。
また、ウォール街は左派的な政策や大企業・富裕層への増税を行うのではないかと警戒していましたが、最近はそれほど恐れる必要はないのではないかとの見方が広がっています。今後の動向に注目ですね。